結露対策ヒーターの作り方

鏡筒やカメラレンズ用の結露対策ヒーターで検索してこられる方が多いのでまとめてみた。

*** 注意!! ***
下記の内容について私は一切の責任を負いません。
『すべては自分の責任において実行する。』これが守れない方はご退場願います。
自作するにあたっての責任はすべてあなたの責任で行ってください。
また、各素材の使用用途についてはメーカーが推奨・保証している使い方から逸脱しています。実行によって発生した故障や損害、被害についてメーカーに補償を求めることは絶対にしないでください。

●概要

スマホなどを充電する目的で販売されているモバイルバッテリーを使用して、望遠鏡鏡筒ならびにカメラレンズ用の結露対策ヒーターを作製する。

●材料・準備物

  • 電熱線(ニクロム線)200Wまたは300W
    工作用で市販されている発泡スチロールカッター用の細い高発熱のニクロム線は使用しないこと。
  • USBコネクタとコード(不要になったマウスやキーボードのUSBコードを使用)
  • 圧着スリーブ
  • 熱収縮チューブ(ニクロム線の被覆として極細のもの。電線接合部の絶縁に太めのもの)
  • モバイルバッテリー(容量は使用目的による)
  • マルチメーター(テスター。電流、抵抗値が計測できるものがベスト) 
  • 圧着スリーブをかしめる工具があればよい
  • その他、絶縁用のビニールテープなど

●作り方


■ニクロム線の計測

まず、ニクロム線の長さ単位あたりの抵抗値を調べる。 基本的な計算は、電圧(V) = 電流(I) × 抵抗(R) で計算できる。

仮に、5VのUSBバッテリーが電流500mAを流すと考えると、必要な抵抗値は、5(V)÷0.5(A)=10Ωである。
そこで、使用するニクロム線が10Ωになる長さを調べる。
市販の電熱線として売られているニクロム線をまっすぐに伸ばし、マルチメーター(テスター)で片端からの任意の長さまでの抵抗値をはかる。
今回使用したニクロム線を例にすると、300Wだと110cmの長さで10Ωとなった。
200Wだと70cmで10Ωとなった。

このとき、それぞれの1cm単位長さあたりの抵抗値は次の通りとなる。
300W 10(Ω) ÷ 110(cm) ≒ 0.1(Ω/cm)
200W 10(Ω) ÷ 70(cm) ≒ 0.143(Ω/cm)

上記はあくまでも参考値。
この単位あたりの抵抗値はニクロム線の材質、太さによって変わるため、実際に購入した線の抵抗値を必ず計測すること。
上記数値からヒーターの長さが必要な場合(鏡筒などの大きなもの)は300W、短いヒーターが欲しい場合(カメラレンズ程度)なら200Wのヒーターで足りそうである。

■ニクロム線の発熱

次に、10Ωの抵抗値の長さに切断したニクロム線を、実際に5Vのモバイルバッテリーに繋いでみる。(注意:ニクロム線をショートさせないようにすること!)
このとき、実測電流値をみるとおおむね0.5A(500mA)になっているはずである。

バッテリーに繋いだ状態で、ニクロム線を実際に触ってみる。(やけどに注意)
ほんのり暖かくなる、ずっと手でにぎっていられるくらいであればOK。
熱すぎる場合はニクロム線の長さを伸ばし、抵抗値を上げる。
ぜんぜん暖かくないならニクロム線の長さを少しずつ短くしていき、抵抗値を下げていく。

抵抗値が上がれば流れる電流が減り、バッテリーが長持ちする。
逆に同じ電圧でニクロム線を短くする(抵抗値が下がる)と電流量が増える。

ちょうどよい適切な発熱をするニクロム線の長さが決まったら、その時の電流値を計測しておく。
一般的にUSB規格としてUSBポートから供給できる最大電流量は500mAであるため、500mAを超える電流が流れる場合は注意が必要である。
多くのモバイルバッテリーは、1A程度流せるように設計されている。(右の写真のバッテリーの場合定格で5V-1000mAまで使用できる。)
この定格値を超えないようにニクロム線に流れる電流量を調整する必要がある。

ぜんぜん暖かくならないのでニクロム線の長さを切り詰めていった結果、例えば1200mA必要になってしまうと実用上、使用できないニクロム線と言うことになる。こうなると、別のニクロム線を入手する必要がある。

また、後述するが、流す電流が多くなるとバッテリーのもちが悪くなる。
かと言って、電流量を抑えると発熱が低くなり、使用する場所によっては外気温との熱交換負けてしまい、まったく温もらないということも考えられる。
このあたりの見極めがポイントになってくる。


■ヒーターの作成

長さと暖かさが決まったら、ニクロム線を熱収縮チューブに通して絶縁する。絶対にショートさせないように。
発熱に対してチューブが溶けるなど、耐えられない場合は他の絶縁素材を考えること。

USBコネクタとの配線は、ニクロム線が半田付けできないので、圧着スリーブを用いて圧着する。
圧着スリーブはアルミ製でホームセンターの電材売り場に置いてあるはず。絶縁被覆付きのもある。



スリーブをかしめるのに専用の工具があればいいが、なければペンチなどでコードが抜けないようにしっかりとかしめる。
USBの+5VとGND端子の線にニクロム線の両端を圧着すればOK。

配線部分を熱収縮チューブで絶縁すればヒーター部分は完成。
実際に数時間、モバイルバッテリーにつなぎ、発熱の状態やチューブが溶けないか観察する。


カメラなどに巻き付けて使用するので、ゴムバンドに縫い付けてしまう。

レンズにぐるっと巻いてバッテリーを繋げばあったかほかほか。
今回作成したのは、5V-500mA仕様のヒーター。
2.5Wで長さも発熱も十分な電熱線を使用した。発熱は頬に当てるとちょっと熱く感じる程度。
3000mAhのモバイルバッテリーでヒーターを使用すると、おおむね4時間程度使用できる。




■5V以外で駆動する場合

ニクロム線が発する適切な発熱熱量の目安は消費電力で見る。
例えば、5V-500mAで適切に暖かくなるニクロム線の場合、電力は計算式、電力(W) = 電圧(V) × 電流(A) で与えられ、5(V) × 0.5(A) = 2.5(W)となる。
このニクロム線は2.5Wで適性な発熱をすると解釈できる。

この数値を目安に、ニクロム線に加える電圧によって必要な適性抵抗値を計算する。
同じニクロム線を3Vで駆動する場合、2.5Wの電力消費にしようと思うと流す電流は、2.5(W) ÷ 3(V) = 0.83(A) = 830mA である。
3Vで830mA流れるニクロム線の抵抗値は、3(V) ÷ 0.83(A) ≒ 3.6(Ω)
仮に、このニクロム線の単位長さあたりの抵抗値が 0.1(Ω/cm) であったとすると、3.6Ωを得るための長さは、3.6(Ω) ÷ 0.1(Ω/cm) = 36(cm) となる。


■バッテリー駆動時間

ヒーターに流れる電流値からバッテリー駆動時間がおおよそだが概算できる。
バッテリーの容量は3000mAhなど、パッケージに記載されている。
市販されているモバイルバッテリーの容量表記は3.7V時のバッテリー容量が記載されている場合が多い。
5Vへの変換ロスなどを考えると、さらに約60%程度の効率となる。

例えば、3000mAhの容量をもつモバイルバッテリーに、流れる電流値が500mAのヒーターをつなげた場合を計算する。

3000(mAh) ÷ 500(mA) × 60% = 3.6(h)

おおむね、3時間40分ほどヒーターが使える計算になる。
このバッテリーが2本あれば、一晩はヒーターの恩恵を受けることができそうだ。

バッテリー容量が5800mAhのものだと、5800(mAh) ÷ 500(mA) × 60% = 6.96(h) およそ7時間頑張れる。

電池もちに関しては、電流が沢山流れるヒーターの場合はもちが悪い。
小さな電流で効率よく発熱してくれるニクロム線だと電池もちがよい。と言うことになる。
また、大容量のバッテリーだと電池切れに関しては安心だが、重いのでカメラレンズでの運用は邪魔になるかもしれない。

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